「異種格闘技戦」?あるいは「他流試合」?

虎とライオンは、どちらが強いか?闘えば、いずれが勝つか?…ではないけれども、世の中の人達は、とかく色んな武道、格闘技に優劣をつけたがるものです。

ある種の武道家は自分がやっている武道の優位性を宣伝したいがために『◯◯五段が私の技で引っ繰り返った』なんて、他流、他武道に対するライバル意識剥き出しで語ったりします。

ましてや、相手がメジャーな武道の使い手で、自分のやる武道の方がマイナーな場合は尚更です。これは一種のコンプレックス、ジェラシーの裏返しで、決して褒められたことではありません。

私は、合気道に入門した時点で、既に柔道五段でしたが、まさか〝柔道の方が合気道より強い〟なんて事を証明するため〝道場破り〟にやって来た訳ではあるまいし、先生方や先輩方の腕前を試してやろう等と考えた事は唯の一度もありませんでした。

ひたすら古流柔術の生み出した二大潮流(柔道と合気道)のもう一つの潮流を学びたい一心でした。

当然、今迄は知らなかった合気道の技を学ぶわけですから、如何に柔道五段と雖も、合気道の稽古独特の条件下では相手の技は簡単に極まるし、私の仕掛ける技はうまく極まりません。

でも、その事をもって〝合気道は柔道より凄い!〟なんて言えないはずです。そもそも〝状況設定〟と云うものがあるのですから…。

たとえば、私は若い頃にレスリングのオリンピック選手と柔道で闘って、勝った経験がありますが、私が勝ったからと言って『柔道の方がレスリングより優れている』とか『俺はオリンピック選手に勝った』なんて言い張れる訳がありません。柔道衣を着ずにレスリングのルールでやったとしたら、私が負けたであろう事は火を見るよりも明らかだからです。

ところが、こう云う事を都合良く脚色して、自己宣伝の為の自慢話にし…先に延べた様に『俺の技で◯◯五段が引っ繰り返った』『◯◯チャンピオンが崩れ落ちた』等と、やる人が居るから困ったものです。

話の中で、或いは本の中で、こう云う事を殊更に言ったり、書いたりする人は信じない方が賢明です。
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